地方から2024年冬のお便り
2024.11.30
厚生労働省の第12回「新たな地域医療構想等に関する検討会」において、
全国で100程度を想定している「重点医師偏在対策支援区域(仮称)」の案を示したとのこと
岡山県全体としては人口10万人当たりの医師数は全国平均超えですが、
地域格差はどこでもあり新見市は明らかに少数に偏在している県内医師不足地域であります
ということは、ついに…この地域も偏在対策の一手が出るといっていいのでしょうか
これから具体化する骨格に対する議論を注視してゆきたいと思います
でも概算でも予算もつけないとだからまだまだ~ですね
ただ予算が出たとしても皆々様にきちんと還元できないと全く意味がないので、
社会インフラを維持すべく当該地域がたゆまない努力することは当然です
さらに、地域医療全体については「撤退戦であることを明確にして、共同で対策する必要がある。
医療を整備しても、過疎化を止めることに役立つとは思えない。資金支援をしても開業等を推進するのは難しい。
国あるいは自治体の責任で、撤退を前提とするような体制の整備が考えられるのではないか。」との意見も
…厳しいがしかるべくものでもありますね
さて、自治医大以外の医学科卒業後、医師キャリアのうちの卒後9年間を各大学のカリキュラムに則って、
「2年間の卒後臨床研修+7年間地域の病院で活躍することを各都道府県自治体の予算を頂き契約する」
という制度が「地域枠制度」であり、すでに10年程度の過渡期となりました
24歳で医学科を卒業すれば33歳まで途中途中で自分のキャリアに合わせ、
各医療機関の研修+実務業務を行いますので、派遣地域の医療機関や診療所は大変助かり力強く感じます
しかし、自治医大卒後医師と異なり地域枠の関連施設は一定ではないため、
一度派遣配置を地域病院が頂いていても次の医師が配置されるかはわかりません
また派遣の期限が1‐3年で終われば、次の派遣がない場合もあるため、
やりたいけれども派遣いただいた個々の能力に合わせた投資は当然十分できず、先の状況も読めないことは心配事のひとつ
2004年卒後臨床研修必修制度が実施された後、関連病院を維持することの役割について
医局の潮目が変わったため地方の病院も人手不足となり、地域枠医師は喉から手が出るほど欲しい人材であるため、
その結果、各病院で地域枠医師を奪い合いの形になっていることも容易に推察できます
そして9年間の義務年限を過ぎた後は、地域枠医師も自治医科大学医師と同様にDuty freeとなり、
個々のキャリアを積み上げる体制になるため、医局に属していればその関連病院に行く、
属さなければ各勤務場所と交渉をしてゆく等、と各人生はさまざま
リクルート斡旋のできる民間医局に属する場合もあり、ひと昔前に比べて個々の選択肢は増えておりますが、
様々なところを経由しても地域医療機関へ安定定着した人員が定期的に来ることは一般的には考えにくいため、
医師の病院偏在が冒頭のように地域間で出てくるわけです
当然のごとく地方に住まうことになると、留学や大学院に行くなど本人のキャリアも、
子供の教育の問題などとの様々な両立についても、これまでも議論になっているも完答できる回答はなく
ケースバイケースで対応するとしか言えないでしょう
さらに人口減少を見据え2040年ごろまでの地域枠医師増員以後、
新規募集がなくなることとなり、スモールタウン化した地方ではどのような充足や配置転換になるのか
そもそも病院の存在がどの形がいいのかなど、医療制度とセットで検討も必要です
もしも通常業務はもちろんのこと、教育・自治体連携などと活躍をし続け、バンバンと業績をpaperにして、
さらに学会を牽引するようなスーパードクターが地域にいるならば(そりゃ中枢に…)、
潤沢な人員が集まり人も呼び込める状態になるのでしょうか
多くの地方医師は日夜しばられる勤務生活を送っており、
さらに職員の生活を抱えるとなると自らのことだけを考えているわけにはいかないし、
医師会活動やofficialな業務がさまざまと舞い込んでくるため、諸々手が回らない状態は現況
地域医療を維持する体制は自助努力ではありますが、
地域人口と疾病状況に応じた医療資源の分配については医師も含め過剰・過少投資にならないように、
保健所・自治体・医師会・大学などがタッグを組んで進めていかないといけないですね
医師も他の職種と同様様々な自由は許されてしかりですが、
一方で国家資格であるため自己都合のみを通せるのではなく、
病院・医院含めた全体の医療施策・医療経済体系を維持すべく国策に応じる必要があろうかとも思います
最近では自由診療に向かう流れが多くなっていることも報告されており、
いろいろSealingをしないといけない状況から冒頭の話の流れになっているのかもしれません
全国9ブロックくらいの範囲のもちろん大学も含めた地域基幹病院に力を預け、
地方医局専門のような部署を作れば、プールされた安定的な医師派遣が許されることとなり、
自己努力では補えなかった投資を見据えた高みを目指せられる地方病院が出てきやすくなるかもしれません
勤務時間制限やBCPなど都市圏での医療状況と地方圏での医療状況を同じコンプライアンスでやってください、
というのは体力・人力のない地方ではちときびしいかしら
でも今日まさに今、目の前の患者さんが困らないようにしているのは、制度的にも時代的にも希少となった先発完投型の医師なのです
そしてその体制を受け継ぐものはさらに希少価値となった人間となり、結局MLBのように分業が主流の形で模索してゆく必要が出てきそう
今ただ言えることは、ASAPで地域医療体制を整えないといけない
DXもすぐには完成できないし、人以外で代替してできる素地がすぐには埋まるはずがないですね
国民の生活インフラ整備がファーストであるのは自明
地域医療や医師偏在の議論が深まることを切にお祈り申し上げます