がくやおち ~副院長の書斎~

犬吠埼

2024.01.30

苦しい時には いつも思い出す

 

医籍に登録され研修医で初めて主治医になった、

銚子水産高校に通っていた男の子のことだ

 

小児血液疾患の化学療法後に起こった副反応で

薬剤性膵炎・膵のう胞・閉塞性黄疸になった

肝がん患者に混じって 珍しく若い彼が入院していたのだ

 

まだ子供らしく 採血を取られるのが嫌だった

気心知れたら ここが取れるからと 教えてもくれた

勉強もゲームも病室で 同級生が見舞いにも来たりした

 

難治療が行き詰まり 毎週毎週 変わらない現状

同じ内容の 教授回診プレゼンテーションが 幾週も繰り返された

記憶では 一時的にも退院はしていなかったのではなかったか

 

数か月後に 原病の血液疾患が増悪再燃し、

追加化学療法の適応効果もなくなって 全身状態が悪化した

他科のローテーションにいた私にも その連絡があり病室まで走った

 

両親も辛かっただろう

懸命に生きようとしていた 友達とともに同じ仕事に就こうと

船上授業に行けないことも話してくれた彼の思いを 皆で共有した時間だった

 

苦しい時には 目の前のことに集中して じっと過ごす

少し軌道にのれば 先も見据えて 大きく踏み込む

小さな変化を前に歩み 後ろに下がり たまに振り返り

 

悪天候には 目先のことに精進し 暗い足元を照らせるように耐え忍び

あらしが過ぎ去れば 灯台のように 遠くを照らすひかりを灯し

走ったり転んだりしながら 人生は積みあがる

 

Mくん

きみも含め いろんな思いをつないでゆくから 応援していてください

苦しかったきみの分まで 少しずつ頑張ってみようと思う