がくやおち ~副院長の書斎~

2023.05.30

5・15事件と言えば1932年(昭和7年)までさかのぼり、犬養毅首相が海軍青年将校らに暗殺された事件としてあまりにも有名です。

「話せばわかる」と一言で発したわけではありませんが犬養木堂は最期までその志しを貫き、「憲政の神様」として皆が知る宰相となっています。

以後、元老の西園寺公望が海軍大将の斎藤実を次期首相へ推し、官僚出身者を中心として二大政党の代表を加えた挙国一致内閣が組閣され、戦後まで政党内閣は現れませんでした。

 

木堂の生家は修復した現在も岡山市北区川入に現存するわけですが、隣接する犬養木堂記念館によると書にすぐれた 「木堂」 「木翁」 「白林遯叟」 などの号で揮毫された書が多数残存し、実際に目にするとその迫力に圧倒されます。

「恕」の作品はその中の一つで、「恕の人」と言われる木堂。「恕」は「①ゆるす②周囲を思いやる」の意。「恕」、なるほど。何事にも自らのこころを落ち着かせてから物事には取り組まないといけないなと改めて思います。

「『論語』里仁 第四 十五」には、「孔子の道・芯は誠実と思いやりである」とあります。

    子曰く:「参や、吾が道、一以て之を貫く。」

    曾子曰く:「唯と。」

    子出づ。

    門人問いて曰く:「何の謂ぞや。」

    曾子曰く:「夫子の道は、忠恕のみ。」

 

「話せばわかる」

当時も現在もあらがう者たちにとっては、甚だ深く考えさせられる言葉です。

自らの状況を俯瞰できる視点を持ち続けることが、「恕」の神髄に近づくことができるのかもしれません。